不気味で素朴な囲われた世界

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

――自覚しよう。きみはこの僕と哲学を戦わせて負けたのだ。





やっぱり西尾維新は毒がなくちゃあ。そう、清々しいくらいの毒が。
というわけで、きみとぼくシリーズ第2弾――といっても舞台を別にした、しかし相変わらず胸糞悪く目が覚めるような吐き気の学園探偵モノ。
日本中に散らばっているという病院坂一族。
前回の黒猫(くろね子)さんに続いて、今回は病院坂迷路が登場。
特徴といえば女の子なのに学ラン――ってコト以上に、台詞の全てを表情だけで語ってしまうという少女です。
言葉、意思疎通の一切が地の文で行われ、鉤括弧がまったく使われないという珍しい御方。
黒猫さんのときは何ページにも及ぶ長台詞で推理の披露が為されたわけだけど、今回も同様、迷路さんの長台詞――ならぬ無言の意思表示が為されたりで、わりと圧巻。
延々と並べ立てられた地の文の後に『病院坂迷路は、そんな表情をした。』の一文で締め括られるという新手法。やるな西尾維新


さて、面白さとしては正直『きみとぼくの壊れた世界』の方が上だったものの、気持ち悪さ、胸糞の悪さで言えば今回の方がキたかも。
キャラ同士の遣り取りとかにしても、うーん、やっぱりそう。
とはいえ作者独特のハイスペックな言葉遊びなんかは読んでて飽きさせない。
あんまり比べることはしたくないけど、入間人間では味わえなかった快さがここにはあった。
好きで良かった西尾維新! って感じだ。