レーシック編(中) Ωサーキット

想定していなかった昨日の展開に、失意を隠しきれないpseudo。
しかし救いの神は、まだ彼を見捨ててはいなかったのである……!
神の名はSBC新宿近視クリニック──昨日と同じく梅田に院を構えるツワモノだ。
藁に縋る思いで問い合わせたpseudoに対し、神は言った。

   「貴様がまだ望みを棄てられぬのなら──来るがよい、我が許へ」

ああ、まだ光は在るのか。
そうして、浅ましくも諦めきれぬpseudoは、再び大阪の地に降り立ったのである──。



とゆわけで、中編。
まだだまだ終わらんよ、という感じで、昨日とは違うクリニックに希望を託す。
検査内容はほとんど同じだったものの──結論、26万円のプランならレーシック手術が可能とのこと。
ほんともう、医師から聞かされたときは飛び上がるほど嬉しかったね。
しかもweb会員割引(当日会員登録したやつ)で3万引きだから、23万で施術可能。
うおおおお、昨日無理矢理やっとかなくて本当によかった……ッ!



そしてその日の夕方。
朝の検査で開いた瞳孔のまま、震える足で手術を受けに行く俺。
クリニックの奥へ通され、ソファに座らされ、麻酔措置をされる。
といっても3回ほど目薬を点眼されるだけなんで、痛みも何もない。
次第に効いてきた麻酔の所為で鼻の奥あたりの感覚がぼやけてきたなー、と思った頃に、もう開始。
簡素な手術台に寝て、まずは第一段階、フラップ作成。
瞼が開いたまま固定され、目が液体に浸された直後、何かが触れて視界がぼやける。
どんどん水の深みへ沈んでいくような感覚。
水面に見える緑色のライトが遠ざかっていく。
触覚は何も感知していない。
ただ自身の鼓動だけを拾う。
見えない不安はある。
曖昧な触覚が心許ない。
しかし不明瞭な視界のまま部屋を移動し、第二段階──矯正レーザー照射に移る。
再び瞼を固定され、何か、遠い触覚の向こうで眼球に微かな圧が加わったような──。
って、
焦げ臭ええええええええええええ!!
ほんの20秒程度のレーザー照射の間、鼻を突く独特の異臭!
ああ、ああああ、俺の、俺のナニかが焦げている、のか……。



同じ措置が当然左右の目に対して施され、そして、固定具の圧迫から解き放たれた。
終わった、のか。
総じてたった10分足らずだったと思う。
俺を20年間苛んだ近視という悪魔を滅するには、たったそれだけで足りるというのか。
手術室を出て別室の、リクライニングのよく利くソファに座る。
そして、目を乾燥させないよう10分間瞼を閉じて休憩タイム。
ああ、すごい、心臓がまだ暴れている。
見えるようになったのか?
目を閉じているからわからないが、こんな簡単でいいのかという疑問が湧き立つ。
でも、何故か笑いが漏れた。
──うひひ。
何にしても戦いは終わったのだ、超お疲れ様。



その後はあっさりと帰されたんで、とりあえず市内の母親の家で一泊したり。
まだ眩しくて光源は直視できないし、あまりよく見えるようになったとは言い難い。
とはいえ俺は、裸眼でクリニックを出た。
そして裸眼で街を歩き、裸眼で電車に乗った。
見えている。
明瞭ではないにしろ、視力は回復している。
すげえ。
あとは明日の検査次第。
それまでとにかく目に触れないよう安静にすること、という医師の指示に従うことにする。