金星で待っている

金星で待っている (メディアワークス文庫 た 4-2)
――想像力で追いかけて。




もうね、タイトルだけで衝動買い。
ところがいざ中身を読むと、SFはSFでも「ストロベリーフィールド」でした。
内容は、劇団で芝居に心血を注ぎまくる若者たちの情熱と行き詰まりと息詰まりの物語。
決して実際に金星へ行くわけじゃあない。
ロケットで突き破るべき“重力の天井”なんて登場しない。
それどころかキャラクタたちは皆、自分の非才さや葛藤が生んだ“才能の天井”に喘ぐばかりだ。
でも、芝居に打ち込む彼らの武器は、想像力。
その力は光より速く駆ける車輪となり、金星どころか銀河の果てまでも連れて行ってくれる――。



とかなんとか。
もっと簡単に、大人になりそうでなれずにいるピーターパンがもごもごしながら大人になる話。
ところどころに滲み出る青臭さには、懐かしさを感じる部分もあったりなかったり。
でもそれ以上に、こう、群青色が濃密すぎて、うわ、うわあああああ……

   「だいたい何だ、雰囲気出してトランクケースなんか持ってさ、
    君は人生にドラマツルギーを求めすぎなんじゃないの」

お、おまいう!(`;ω;´)
芝居の世界を非現実に捉えつつも、キャラクタの姿勢が既にドラマティカすぎるだろ……!
挙げ句、ラスト付近でバイト先の事務員とプチロマンスしちゃうシーンなんて、あ、あああああああ……!



とはいえ、チャチなコメントで申し訳ないけど、とても面白かったです。
ページ割の独特さは、演劇経験者ゆえ?
主人公の一人称には時々モヤモヤさせられたものの、テンポよく物語を進めてくれたし。
……後日談は、なんとなく全体的に綺麗にまとまりすぎてるなーという気になったけど。
それでもやっぱり、ハッピーエンドは正義。
でないと哀川さんにどやされちまう。