傷物語

傷物語 (講談社BOX)

――泣き虫じゃのう――我が従僕は。情けない。
――ち――違う。これは涙じゃない。これは、これは――血だ。




時に人間をも殺しうるという退屈に対抗すべく、俺は、一冊の本を手に取った。
西尾維新の趣味全開小説『化物語』の続編にして前日譚、『傷物語』を。
といっても、単行本でなく、初掲載時のパンドラ Vol.1 SIDE-Aでなのだけれど。
だいぶ前に読んだもののおそらく途中で放置してあったのだか何なのだかイマイチ内容を憶えていなかった。
なので、今回寝込みながら読み終えたり。



とゆわけで『傷物語』。
主人公・阿良々木暦が、初めて出遭った怪異のおはなし。
忍野忍――キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼。


各所で云われているとおり、なんとなく、おとなしい感じの全編ですね。
前日譚である以上、物語を掻き回してくれる戦場ヶ原ひたぎ神原駿河八九寺真宵あたりのキャラはまだ登場しない。
レギュラーで云うならば唯一羽川翼@委員長ちゃんが出てくるだけ。
勿論このシリーズの売りである会話遣り取りシーンは面白いですよ?
特に、こう、セクハララインスレスレ(一部オーバー?)のおっぱいトークは素敵すぎる。
っつーか冒頭、彼女のパンチラについて延々と描写が続くところは神懸かってすら。
そりゃありゃりゃぎさんだってムラムラするわ!


あ、やたらとアニメ化を意識したメタ発言は楽しいな。
でも、どっちかっていうと障害になりそうなのは流血残虐シーンじゃなく、むしろ西尾維新の味である言葉遊びの方じゃなかろうか。
ほら昔から西尾作品を映像化するにあたっての壁といえばそこだろう?
今回で云うと、

     「きみは僕の立ち位置からの視点で見たら――廿いんだよね」
     「にじゅうい?」
     「あ、違う、甘い」
      忍野は言い直した。
      いや、そんな言い間違いはありえないだろ。

のあたりとかね。
背景に文字が浮かぶようなアニメワンシーンを想像してみたけど……うーん、お寒い空気が紙一重って感じになりそうで怖い。
実際シャフトによってアニメ化することが決まってるから、諸手をあげて喜べる結果を期待するだけだけど。



まぁいいや、次は『偽物語』だ。
下巻が出る前にサクッと読んでしまわないと。