だから言ったのに

昨日の宣言どおり『ダークナイト』観てきたー。
前作ビギンズのラストで明示されていたように、ゴッサムシティに新たな悪の影――ジョーカーが現れる。


まず驚いたのは、前作で軽くイイカンジになっていたレイチェルに、別の男ができていたことか。
その男こそが今回の重要キャラクタ。
ゴッサムに希望をもたらす熱血検事、“光の騎士”ハーベイ。
べつにレイチェルに対し思い入れがあったわけじゃないけど、ねぇ?
一応前作ラストで、主人公ブルースとは単純にくっつくわけじゃあないという条件的なものが提示されていたものの……いやはや。


しかし一番の見所はやはり今回の敵役、ヒース・レジャー演じるジョーカーだろう。
その一挙一動一投足、演技の隅々に滲み出る狂気が素敵すぎて震えること請け合い。
かつてのジョーカーはジャック・ニコルソンだっけ?
彼のジョーカーがあったからこそではあるのだが、今回は、よりサイコチックというか、言い方悪いけど下品な感じが素晴らしかった。
くちゃくちゃ音を立てて喋る声。
あえて粗雑で汚らしいメイク。
気が付けば、先の読めない彼の行動に引き込まれてしまった俺がいたり。
いやほんと、世界は惜しい方を亡くしてしまったですよ。
あるいは、死の直前だからこそ降臨した神懸かりっぷりだったのだろうか――。


物語は急転直下。
前作アルフレッドに

      「何故人は堕ちるのか――どん底から這い上がることを学ぶためです」

なる台詞があったわけですが、今回はさらにどん底
ゴッサムの混沌に呑まれるように、登場する誰もが底辺的な状況に陥っていく。
あー、観てる最中は『セブン』のラスト的な感覚だったな。
救われないことよりも、泥沼にずるずる嵌っていくような絶望感、足掻いてもどうしようもない蟻地獄。


けれどそんな中、バットマンは高潔な背中をこちらに向けて立つ。
ぼろぼろになっても、市民から必要とされなくとも、戦う。
レイチェルの手紙なんてもう完全に追い打ちだしなぁ。
知らぬ方が良いことも世の中にはあるというか――アルフレッドGJと言わざるを得ない。
挙げ句、守るべき全てを敵に回すという茨の道を自ら選択するのだった。
その姿は“暗黒の騎士”。
闇の中で皆を見守り守護する者。


まぁそんな感じで、全編暗めの展開を見せてくれる『ダークナイト』。
でも胸の空くアクションもあって、盛り上がるところはきっちり盛り上がるですよ。
個人的に熱いシーンベスト3は、香港強襲誘拐、モービル分離、そして格好良い囚人でしょうかね。
香港〜は、疾風のようにかっ攫うその手際の良さに惚れ惚れ。
モービル〜は、ステイメンばりに射出されるでけぇ二輪と、オーキス役モービルの「Good-bye」に燃ゆ。
囚人〜は、まさかまさかの格好良さ。
ああっ、名も無きモブ囚人なのにっ、俺こいつになら菊門を差し出してもアッー!


とりあえず二時間半を長く感じさせない。
万人受けするかと言われればややダークすぎるあたりが言葉濁り気味だけど、それでも傑作だと断言できる。
是非多くの人に、時に凍え時に熱い、昏々としたゴッサムシティの暗中に浸ってほしい。







そういえばCMで流れてた「口が裂けるほど笑わせてやるよ」が無かったのはショックだわ(似た台詞やシーンはあったけども)。