〈小市民〉シリーズ

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫) 夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫) 秋期限定栗きんとん事件 上 小市民シリーズ (創元推理文庫) 秋期限定栗きんとん事件 下 小市民シリーズ (創元推理文庫)
――今夜みたいな会話の方が、解決篇の方が、何倍も昂奮する。
   喋らせてくれてありがとう。やっぱりこっちの方が――体温が上がるよ。



春期限定いちごタルト事件』。
夏期限定トロピカルパフェ事件』。
秋期限定栗きんとん事件<上><下>』。
いわゆる〈小市民〉シリーズ既刊4冊。
中学時代、自身の智恵を驕るあまり過ちを犯した少年、小鳩常吾郎。
中学時代、荒れる復讐心を飼い慣らせず過ちを犯した少女、小佐内ゆき。
そんな“狐”と“狼”を胸に潜めた2人が高校で出会い、互いに互いを諫める互恵関係を謳いながら、いつか在るべき“小市民”を目指していこう――というなんだかわからない青春小説。
その説明こそよくわからないけど、第一印象は〈古典部〉シリーズで得たのと似た、日常から謎を汲み取り解決するプチミステリといった趣き。
ただし、第2巻にあたる『夏期限定〜』のクライマックスで、読者たる俺の心は大きく揺らぐこととなった。
狐たる小鳩は、結局狐を鎮めることができないまま、探偵役としてしゃしゃり出ずにいられなかったように。
小佐内もまた狼である自分を打ち消すことはできなかった、という衝撃。
単純にスイーツ好きの萌えキャラやないんやで! とこちらの幻想をぶち殺されただけで、俺の脳はガンと揺れた。
この衝撃たるや、紫木一姫があっさり殺された瞬間に比肩する。
怖い、怖いよ米澤穂信