天の光はすべて星

天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)

――おまえ、おまえ、わかってくれるだろ? な? こうするよりほか仕方ないんだ。
   いくところまでいっちまわなければ、止まるわけにはいかないんだ。
   いくところまでいったら一巻の終りだとしても、いかないわけにはいかないんだ。



天元突破グレンラガン』の最終話サブタイトルで知られるこの小説。
そういう意味で、GAINAXのサブタイセンスは非常に素敵だ。
『果しなき流れの果に(トップをねらえ!)』といい『あなたの人生の物語トップをねらえ2!)』といい。
ああ、エヴァももちろんいいよね。けもの。
俺のようにこうして、好きなアニメから他方面へ食指を伸ばす人は少なくないはず。
そうすると、普段触れないタイプの作品世界を知れるので、結果、自分の見識が拡がっていく。
それがいい。



とゆわけで、『天の光はすべて星』。
フレドリック・ブラウンのSF作品なんだけど、その内容たるや、なんだ、その、予想からかなり逸していたり。
これはまずもって、宇宙空間を舞台にした物語ではない。
“天の光”を、あくまで地上から仰ぎ見る人間たちの物語だった。
星を見上げ、宇宙を夢見、未来に憧れ、未知に焦がれる。
──だってさ、まさか人を選挙で勝たせるため60手前のオッサンが奮闘する話が前半を占めてるなんて、思いもよらんぜ?
てなもんで、正直100ページ越えても面白さが見出せなかったんよなぁ。
ほら、ロマンス部分だってね、そのオッサンと50手前のおばさまのアレですし……ねぇ?



ところがところが。
皮肉にも面白くなったのは、そのおばさま──エレンが病院に担ぎ込まれてから。
文字通りロケットに命を捧げた彼女を想い、夢を枯れさせず戦い続けるオッサンの運命や如何に。
後半の荒波はとても面白く、浮き沈みする主人公とハラハラしたり、はたまた主人公自体にハラハラしたり。
そうして至るラストシーンのモノローグ、

   ああ、エレン。
   おまえが今わたしと一緒にここにいて、わたしたちのロケットが飛び出すところを見られたらなあ。

これには思わずグッときた。
ヤバいヤバい駅のホームでpseudo泣いちゃう。



――人間一人でできることに限界がある。
けれどもいつの日か、今ある限界なんて大きく踏み越えた先へ、ヒトは歩みを進めることができるだろう。
そうさ千年前と現在を比べてどうだ、その違いを考えれば、現在と千年後なんて何がどう進化しててもおかしくはない。
大切なのは、どこかで誰かが夢を見るのを忘れないこと。
継がれた夢はいつしか結実し、それは一個の“ヒトの夢”として何かを残す。
そんな壮大なスケールが、まさに宇宙的というか、サイエンスなフィクションの味というか、超御馳走様でしたという気分にさせてくれたり。
……たまにはいいなこういうのも。