サイハテ

……或る一つの恋が死んだ話をしよう。
始めに断っておくが、これは陳腐な比喩だ。高尚な戯言だ。
世界にとっては塵芥に等しい喜劇であり、ほんの六十九億分の一の悲劇でしかない。
とうの昔に死んだと思っていた筈の屍が、実は何処かの蔵の奥の奥でただ眠っていたというだけの話。
だがそれも今日死んだ。
実に八年越しの殺害だ。
笑いすら零れてしまう。ははは、笑ってくれていい。笑え。
遅きに過ぎる死。
けれども、これを看取らなければ俺は前に進めない。
だから、呪詛とともに祝福を。
願わくば――改めて天に昇った死の煙が迷わず鎮魂の座に辿り着きますように。