WE ARE KAZEYOMI!

――と、いうわけ、で!
今日は朝からスネークばりの隠密動作によって寮を抜け出すことに成功。
まぁ若干の誤算で約一名に遭遇してしまったりもしたけど……そこは水に流す。
いざ脱出、一路有楽町、東京国際フォーラム
そう、今日は待ちに待った――坂本真綾ライブツアー2009東京公演の日なのだ!



              ◇



ゆったり向かったものの若干の余裕があったため、有楽町の近辺で時間を潰すことに。
そのとき、ビックカメラを目にしてふと思い立った。
そうだ、今日の座席はなんたる不幸か、49列中の48列目。
遠すぎてマーヤの表情や動作が見えない、なんて悪夢だって無きにしも非ず。
そんなわけで、行き当たりばったりで小さな双眼鏡(税込1480円)を購入、これで無敵モード突入です。



それでもまだ十四時過ぎ、まだ時間あるなーと思いつつ、ふと2chを覗いてみる。
すると――

   381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:22:31
    ちょwwwwまだ2時なのに俺等並び杉wwww

   382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/01/24(土) 14:23:14
    限定携帯ストラップ欲しさにやって来たけど
    結構並んでいる件w

なんだって――――!?
物販開始は十五時と聞いていたからこその余裕だったってのに!
慌てて国際フォーラムのホールAへ駆け込むと、なるほどたしかに行列ががが。
こりゃいかんと列を辿って歩いていくと、最後尾はホールを飛び出し屋外に。
なんという……フライング……。
しかし負けじと俺も列に加わり、牛歩もかくやという足並に連なった。
徐々に徐々に進行する列は、やがて再びホール内へ入ると、中央階段を這い上がり、グッズ販売スポットへと辿り着く。
よし、数はまだまだある。
一頻り眺めた後、やっぱり予定通り一式揃えて買うことに決定ー。
ふぅ……マーヤアイテムのためならトータル14500円も痛くないったら痛くないぜ。



買うもの買ったらあとは開場の十七時を待つばかり。
さっきの階段下に並べられた花輪をまったり眺めたりして時間を潰しますよ。
ちなみに花輪の贈り主は、ざっと見たかぎり「菅野よう子」「flying DOG」「CLAMP」「講談社」あたりが主かな。
あ、スクウェア・エニックスの野村&今泉からも来てたか。
これはやっぱりVIIのエアリス? それともXIIIだったり?



で、俺が開場列に加わったのは十六時半頃からなんだけど……な、長ぇえええぇぇぇぇっ!
さっきの先行物販の、優に何倍だ?
会場の外からさらに先、向かいの建物に沿ってぐるりと続く長蛇。
会場時間が若干遅れているというアナウンスがげんなり具合に拍車を駆けるけども、めげずに並ぶしかない。
次第に暗くなりゆく寒空の下、黙々と連なる人々のうねりは遅々として進まない。
結局――ホールに入り席に着けたのは十七時二十分くらいだったように思う。




そして、いざ開演!!!!!
セットリストはこちら。

     1. vento
     2. Get No Satisfaction!
     3. トライアングラー
     4. ループ
       (MC)
     5. 風待ちジェット
     6. 風が吹く日
     7. プラリネ
     8. Lucy
     9. 走る
       (MC)
     10.約束はいらない
     11.指輪
     12.僕たちが恋をする理由
       (MC)
     13.光あれ
     14.マメシバ
     15.さいごの果実
       (MC)
     16.カザミドリ
     17.ユニバース


    アンコール
     1. プラチナ
     2. tune the rainbow
     3. NO FEAR/あいすること(弾き語り)
    アンコール2
     1. ポケットを空にして
     2. カザミドリ(弾き語り)

前回ZeppTokyoで行われたIDS!のFCイベントではポケ空のときだけ立ったけども、今回はオールスタンディング。
というか、Get No〜の段階で立たずにはいられない空気が爆発して、気が付いたら立って手拍子してたw
ループというシングル曲ラッシュの後、1stMC。
っつーかね、つーかね、赤いミニスカートのマーヤってば超可愛いの!
ひらりひらりと跳ねるようにステージを駆けては、透き通る声で俺たちを魅了する。
もう、完全に虜でした。


続いては、彼女が今回のアルバム『かぜよみ』に至るまでに刻んできた足跡としての代表曲を新旧織り交ぜて披露、ってコトで。
――正直、油断した。
まさか1stアルバムから風が吹く日が来るなんて。
自然と涙が流れ落ちるのを止められようはずもなく。
ただただ陶然と美声に心を委ねることしかできなかった。


しかし、しかしですよ、まさかのピアノソロLucyを挟んで再登場したマーヤを見て再覚醒!
今度は黒のミニスカートだだだだ!
あの娘はホンマ天使やで……。
そんな衝撃も冷めやらぬまま、今回の東京限定ストリングスカルテットを活かした楽曲編へ突入ですよ!
約束指輪というエスカフローネコンボ! ザッツ28カラットwwww!
盛り上がるところで歌詞を間違えようが構わんよ、ナマ指輪が聴けたことが超嬉しいんだから!


この頃には既に、切らす息も絶えつつあるって感じの興奮状態。
けれど攻勢はまだまだ止まらない。
二十八歳の今だからこそ、過去の自分に唄いたい歌がある――光あれ
ぎゃあああああああああああああああああああ!
もしも今! この声が! 誰かに届いてるなら!
眩いばかりの閃光が俺の網膜を、脳髄を、心の奥の深いところを貫いていく! 俺の汚れた心、アンロック!


はぁ、はぁ……。


変な力の入れ方をしていた所為か、ふくらはぎが張ってて痛い。
脳内麻薬どばどば。
そんな折、最後のMCを挟むと、彼女は言った。
今回のアルバムを製作して、まさに自分自身となり、そして自分自身を唄った歌。
カザミドリ
……それをどう表現していいのかわからない。
神懸かってすら見えた。
このまま何もかも止まって、会場を丸ごと閉じ込めてしまえばいいとさえ。
けれど、こうして最後の曲が始まってしまう。
俺たちは前奏の最中、一様に小さなサイリウムを手に取る。
一本一本は小さな青色の光、しかし闇の中で五千の光が瞬くその様はまさに唄われるとおりの、青い灯がともるユニバース
泣きながら唄うその姿に思わず貰い泣きをしてしまいながら、狂おしいほどの一体感に囚われる。
スタッフ、そして俺たちから彼女へのささやかなサプライズ。
このときばかりは後方席でよかったと思った。


……終わらないアンコールを掻き分け、坂本真綾は再び駆け出す。
前回イベントを受けての再チャレンジであるNO FEAR弾き語りは完璧だったし。
アンコール第二弾、全員大合唱のポケットを空にしてはどうしようもないほどの清々しさをくれた。
なのにまだここであのお姫さまは、さっきのサプライズへのお返しとばかりに、最後の爆弾を掲げるのだ。
再びのカザミドリ――ただし今度は弾き語りバージョン。
真っ暗のステージで、一条のスポットライトによって浮かび上がるピアノと彼女。
まさかまさかのラストトラックに、これまでの比じゃないくらいの拍手が轟いて、夢のような三時間は幕を降ろしたのだった――。



               ◇



で、今回のオチ。
熱に浮かされたまま会場を出た俺は、そのまま東京駅へ移動したわけなんだけど。
ふと思い出したように鞄を漁ると、双眼鏡が無い。
あー……座席に置き忘れたみたいだ。
っつーか、実は一回も使ってねぇw
まぁ使わずとも結構見えたし、正直レンズ越しに姿を見るのが勿体ないと感じたんだよなー。
というわけで1480円は藻屑なのでした。



しかし人前に出るのが苦手云々と惜しげなく心中を晒してくれたマーヤが、最後には「ライブ最高!」って叫んでくれて嬉しかった。
きっと会場にいた全ての“かぜよみの民”が同じように感じたと思う。
いつもは退屈な、けれどもかけがえのない「普通」に埋もれている俺たちだけど。
またいつかこうして最高のライブに集まれたらいい。
そのときはまたあの旗を手に、

          高くその旗を振りかざせ!