ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

――そうさ、いつだって背水の陣 槍を取って入る覚悟はできてる
   時間切れで後悔する前にオンボロトラックにすべてを託すのさ




MF文庫Jなんて某ゼロ魔くらいしか知らない(それすら読んだことない)んだけど。
ぶっちゃけると、表紙にギター持った女の子がいた、それだけの理由で購入しました。
あとはタイトルのセンスか。
ベネズエラでビターなマイスウィート?
それは小粋な洋楽バンドを初めて見たときのように、仄かな引力。


すげぇ引き込まれた。
いや、読後早々そんな単純なコメントをしたら左女牛さんに愛想尽かされそうだけど。
単に面白い、という感想とはちょっと違う。
まぁキャッチコピーに「せつなさはロック」と挙げているとおり、全編しっとりめの、どちらかといえば陰を帯びた展開が続く。
それでも、するするとページを繰らせる魅力があったように思う。
たとえばふとしたセンテンスから。

       神様、人はケーキの飢えをじゃがいもで満たせるでしょうか

       焼いたフルーツってずるい味がする

ある意味主人公である左女牛さんの独白と台詞なんですがね、両方とも。
なんかこう、その一言だけでがっつり心を掌握されてしまった感がある。
このセンスについていきてぇ的な。
まぁ、それも序盤だけで、中盤以降はそんなに輝く箇所が見受けられなくなってしまって哀しいかぎりなんですけど……。
その鋭さを是非全編維持してほしかったな。


ともあれ面白かった(結局それか)。
主人公達が、昨今のラノベラノベした萌え萌え虫酸ダッシュな関係でないあたりとかも俺的ポイント高し。
ただべたべたと接するのでもなく、けどお互いがいることが自然で、でもそれはとても脆くて……。
そのへんもビタースウィートたる所以といえば所以なのか。
素敵。


古い上に畑違いだけど、『BITTERSWEET FOOLS』なんかにも通じる魅力があったよね。
あの頃のminoriはよかった……。


逸れまくり。