声で魅せてよベイビー

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

――……でも、キミは違ったよね。




とりあえず黒玉は金朋ヴォイスでお願いしたい。



ファミ通文庫なんて縁遠いと思っていたけど、〝文学少女〟シリーズをきっかけに少し距離が近くなったのだろうか。
というわけでコレ、タイトルの語感とヤス氏のイラストに惹かれるカタチで購入。
著者は新人だし、事前情報なんて一切なかったけれど――うん、まずまずの面白さだったかな。
爆発的なものはなかったものの、あくまで「まずまず」という感じでひとつ。


しかしカラー口絵には完全に騙されたな。
ライトノベルの価値として結構なウェイトを占めているであろう冒頭数ページをこんな形で使うとは。
言ってみれば、全編通して最大のサプライズがここかも。
ブラッドベリーの件も簡単に読める範囲だったしなぁ。


設定としては、もうちょい沙奈歌の〝腐女子〟ってところを活かしてもよかったんじゃなかろうか。
ラスト、舞台での本音大告白で、腐女子であったことが原因で過去に云々というのがあったけれど、どうせならもっと本編中で一言二言あってもよかった。
っつーか、たぶんそのへんは大関先輩が完全に食ってしまったのが原因でもあるんだろうな。
まぁ、大関狂喜のシーンは笑えたけど。


で、主人公、広野。
孤高を求めるその姿勢には非常にトキめいたものの、アレだ、実際にいたらちょっと嫌な奴だよなぁと思いながら読んでしまった。
や、や、嫌いじゃないよ。
思考のわりに単純化された言葉。「Y」、いいんじゃない? 二人の関係を「回転」と喩えるところとかもヒット。
ええい、悶々と悩む若さが正直羨ましいんだ俺は!
ラヴコメ万歳じゃないか!
ああっ、恋がしたい、恋がしたいよ――!